「分け入っても分け入っても青い山」で有名な山頭火と尾道について書いてみたい。 尾道は小さな街であったが、山頭火が来た頃の花町はたいへんな賑わいであって、芸者はいるわ、売春宿はあるわ、喧嘩は絶えず、肩が当たった当たらずで喧嘩、女の取り合いであばれる、といった賑わいであった。 花町の入り口にクリーニング店があり、その店先まで山頭火が酔いつぶれてのたわっていたそうである。 人通りの激しい店先で、乞食坊主が酔っ払って寝ているので迷惑この上ない。酒臭い坊主が寝ているのである。(今では当時の面影は無く、静まり返っている。) そのクリーニング店のお婆さんが、ぶつぶつ云うのでもなく、邪魔にするのでもなく、「その坊さん、腹が減っているだろうと、彼が目を覚ましたとき、食事とお茶を差し出したら、その坊さんが1句の短冊(たんざく)をくれ、3晩で3句の短冊をもらったそうで、今でも大事に保管しているそうな。」 クリーニング店のお嫁さんが云っておられた。後になって、あの有名な山頭火という俳人であると分かったときの驚きはなかったそうである。




